食中毒対策
2021/02/24
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響により、飲食店がお弁当等のテイクアウト(持ち帰り)・デリバリー(出前)を開始する動きが加速しています。
しかしながら、調理したその場で食事をしてもらう飲食店と、お弁当等のテイクアウト・デリバリーでは、衛生管理や食中毒対策のポイントが異なります。特に夏場は、細菌やウイルスを原因とする食中毒が多く発生。中でも8月は厚生労働省が「食品衛生月間」に定めるほど食中毒が発生しやすい時期です。
食中毒を絶対に起こさないために、飲食店がお弁当等のテイクアウト(持ち帰り)やデリバリーを行う上で押さえておきたい食中毒対策のポイントや、テイクアウトの弁当販売での食品表示(表示義務など)についてまとめました。
テイクアウト・デリバリーとは、客席に提供する場合と同様に、食品の調理後、直ちに、簡易な包装を施し、注文者に提供する行為のこと。但し、注文を受けてから調理する“出来立て”ではなく、まとまった量をあらかじめ調理しておく場合は、「仕出し屋」の許可が必要となります。
食中毒の原因は大きくわけて5つあります。
食中毒のおよそ90%は細菌性、ウイルス性です。
細菌の中には、細菌に感染した食品を摂取し体内で増殖した細菌が病原性を持つことで起きる「感染型」(サルモネラ、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌など)と、食品内で細菌が産生した毒素を摂取することで起こる「毒素型」(黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌など)の2種類があります。
また、ウイルスが蓄積している食品の摂取や、人の手を介して感染が起こることも考えられます(ノロウイルスやA型肝炎ウイルスなど)。
この「細菌」と「ウイルス」を防ぐことが重要です。
※全国における食中毒発生状況(H30年度)より
細菌やウイルスを【つけない】【ふやさない】【やっつける】が食中毒予防の3原則です。
食中毒の原因となる、細菌やウイルス等を食品につけないこと。手洗いや、調理器具の洗浄、調理する際のマスク着用も有効。
食品についた細菌を増やさないよう、調理は迅速に。すぐに食べない場合は、すぐに冷蔵庫へ入れる。
細菌やウイルスの多くは高い温度に弱い。調理する際は、食材の中心まで熱が通るよう、十分に加熱する。
この中で最も大事なのが、「つけない」。細菌を付けないためには、個人の衛生管理がとても重要になります。
まず第一に「微生物を付けない」ということですが、簡単にいいますと、微生物を食品に付けないようにするということです。
とはいっても、ほとんどの食品にはもともと微生物が付いていますし、健康な人の皮膚にも菌(黄色ブドウ球菌)がついていますので、まずは食品をきれいに洗うということ、そして、何よりも重要なのが「手洗い」です。
手指が汚染されていると食品を取り扱う際に食品を汚染してしまいますよね。コレが二次汚染といわれるものです。手洗いはこの二次汚染を防ぐ重要なポイントとなります。
※手指などに切り傷や化膿巣がある場合、通常よりも黄色ブドウ球菌が多い可能性が高いので、食品に直接触れたり、調理をしないようにしましょう。
調理器具や施設を洗浄、清掃して清潔にしておくことも重要です。施設が汚いと害虫やねずみなどの発生にも繋がります。そこから、食器や保管中の食品を汚染してしまう危険性もあります。
そして、保管中の食品に菌や異物が混入しないようにラップ等でカバーして包んでおきましょう。食中毒原因微生物が多く含まれる肉や魚の汁が他の食品につかないように別けて保管することもポイントです。
更に、食品を取り扱う器具やダスターは用途ごとに使い分けてください。これも二次汚染防止につながる重要なポイントとなります。
食品衛生は、手洗いにはじまり手洗いに終わる、と言われるぐらい、手洗いは重要です。簡単かつ基本的であるはずの手洗いですが、業務が多忙になったりすると徹底出来ていないのが現状です。
正しい手洗いを行うことで、食中毒だけでなく感染症予防にもつながりますので必ず実施すべき対策です。
①いつどのタイミングで手洗いを実施すべきか。
作業を始める前(休憩後も含む)、トイレの後、汚染作業区域から清潔区域に移動する時、食材変更時等の調理作業の区切りごと、ゴミなどの汚れたものに触った後に必ず手洗いを行う
②正しい手洗い手順に従って、正しい手洗い手技で手洗いが出来ているか。
増やさない=温度と時間の管理
細菌の増えやすい条件は「温度、水分、栄養」です。この3つの要素が時間が経つと細菌は増えていきます。温度と時間の管理が大切です。
大体20~50℃くらいの温度が細菌の増えやすい温度として知られており、時間がたてばたつほど細菌は増えていきます。
すなわち、「食中毒菌を増やさない」ためには食品を保管する際に「温度」と「時間」をしっかりコントロールする必要があります。
大量調理施設マニュアルには、原材料および調理済み食品の適正な温度が記載されています。
先ほど微生物が増えやすい温度が20℃~50℃といいました。すなわちこちらの温度帯を避けて保存すればいいわけです。こちらにありますように、10℃以下、もしくは65℃以上で保存して、微生物の増加を防ぎます。
調理済み食品はそのままお客さまの口に入るので、ほかからの汚染や微生物の増殖を防ぐために速やかに提供しましょう。
盛り付けは素手ではなく、箸やトング、使い捨て手袋などを使用して行います。
提供する際には、料理のできあがり具合はよいか、毛髪などの異物はないかなどを確認し、お客さまに誠意をこめて提供しましょう。
冷蔵庫の温度はしっかり確認してください。
始業時、ピーク後、終業時の少なくとも一日3回程度は記録しておくと、故障に早く気づくことも出来ますし、もしもの事故の時の重要な資料となります。
そして、食材を十分に冷やしておくためには、熱い食品をそのまま冷蔵庫に入れてしまうと、周りの食品の温度も上がってしまいます。あら熱を取ってから冷蔵庫に入れましょう。
また、詰め込み過ぎては、冷気がうまく循環せずに一部の食品が冷えない危険があります。食材を少なく保つように、仕入れ食材は先入れ先だしを行なってください。
冷蔵庫の清掃も大切です。こまめに行うようにしましょう。
やっつける=十分な加熱
ほとんどの食品には微生物が付着しています。
野菜は洗浄することで微生物を取り除けますが、お肉などは洗えませんので、十分に加熱して微生物をやっつけます。
菌やウイルスは熱に弱いので、食材は中心部まで加熱しましょう。ウイルス:中心温度80~90℃で90秒以上加熱で失活
菌:中心温度75℃で60秒以上加熱で死滅する※芽胞菌は加熱耐性が高く生き残ってしまうので、増やさない対策が重要。
また、調理器具は洗浄後、熱湯や台所用殺菌剤などで殺菌することが大事です。
そして調理器具なども食品への二次汚染防止の為に洗浄に加え、殺菌を行うことで衛生管理の最終目標といえる微生物レベルの清潔を追及していく必要があります。
その他食中毒三原則の対策として、調理器具以外にフードカッター等の調理機械や電子レンジ内部、冷蔵庫内部、シンク、更にはタワシやブラシ、スポンジ等の洗浄用具類等の洗浄・殺菌も重要です。
洗浄箇所、洗浄頻度、使用洗剤、洗浄方法をまとめたマニュアルです。ご活用ください。
食中毒予防の3原則のほか、個人の衛生管理により「菌を持ち込まない」ことも、食中毒予防につながります。
調理に携わる人が下痢や熱、吐き気がある場合は、調理作業に従事してはいけません。従業員の皆さんは毎朝、起床時には自分の体調をチェックし、異常がないことを確認してから出勤することを心がけてください。
従業員の皆さんが調理場内に細菌やウィルスを持ち込み食材を汚染したり、他の従業員を感染させないようにすることが重要です。
調理に従事する前に行う健康チェックと記録は非常に重要な意義をもっていますので、正しく申告することをルール化し、徹底してください。
ノロウイルスによる食中毒では、患者の糞便や嘔吐物がヒトを介して食品を汚染したために発生したという事例も多発しています。
ノロウィルスは少ないウィルス量で感染するので、ごくわずかな糞便や嘔吐物が付着した食品でも多くのヒトを発症させるとされています。
食品を取り扱うヒト自身から食品への二次汚染を防止するため、食品取扱者は日頃から自分自身の健康状態を把握し、下痢や嘔吐、風邪のような症状がある場合には、調理施設等の責任者にその旨をきちんと伝えましょう。
そして調理施設等の責任者の方は、下痢や嘔吐等の症状がある人を、食品を直接取り扱う作業に従事させないようにしましょう。
ノロウィルスは感染していても症状を示さない不顕性感染も認められていることから、食品取扱者は、その生活環境においてノロウィルスに感染しないような自覚を持つことが重要です。
また、ノロウィルスは下痢等の症状がなくなっても通常では1週間程度長いときには1ヶ月程度ウィルスの排泄が続くことがあるので、症状が改善した後も、暫くの間は直接食品を取り扱う作業をさせないことが望ましいですが、それが厳しい場合はマスクや衛生手袋の着用、手洗いの徹底の方をお願いします。
健康チェックでもうひとつ注意が必要なことは手荒れや手指の傷がないかということです。手荒れや化膿した傷口には、食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌が付着している可能性が高いです。
このような場合は、直接食品に触れる作業に携わらないことが原則です。絆創膏を巻いた手で調理する光景をよく見かけることがありますが、これは絶対にやめてください。このような場合は、必ず使い捨て手袋等を着用するようにしてください。
微生物名とその特徴、汚染・感染経路、発病までの時間/症状、予防のポイントを資料にまとめました。食中毒予防にご活用ください。
テイクアウト・デリバリーは、食品の調理後の温度管理を行わないことから、食中毒を起こさないためには、出来立てをすぐに提供することが重要です。具体的には、
※参考:「テイクアウト等を利用するときのポイント~食中毒を防ぐために~」(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_034/
※参考:「多店舗展開する外食事業のための衛生管理計画作成の手引き」(一般社団法人日本フードサービス協会)
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000496639.pdf
厚生労働省より各都道府県、保健所設置市、特別区に「飲食店における持ち帰り・宅配食品の衛生管理などについて」の通達が出されています。
これによると、新たにテイクアウトや宅配等を始める飲食店 営業者に対して、一般衛生管理の徹底に加え、下記の事項に留意して実施するよう厚労省は求めてます。
※参考:「飲食店における持ち帰り・宅配食品の衛生管理等について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000628784.pdf
食中毒による賠償は発生したときに備え、保険には必ず入るようにしましょう。
一部保険をご紹介しておきます。
食品営業賠償共済(公益社団法人日本食品衛生協会)
http://www.n-shokuei.jp/kyousai/baisyou.html
テイクアウト・デリバリー総合補償プラン(東京海上日動火災保険株式会社)
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/200721_01.pdf
シートを料理の上に置き、蓋をするだけで、風味を損なわず、料理をさまざまな菌から守る「ワサオーロ」という製品もあります。
電子レンジにも対応しているのでお客様の不便にもなりません。
お弁当やテイクアウト品に、更なる安心を得ることができます。
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飲食店がテイクアウト・デリバリーを行うにあたっては、原則、飲食店営業以外の許可は必要ありませんが、食品の種類によっては製造業の許可を必要とする場合があります。詳しくは最寄りの保健所にご相談ください。
飲食店がテイクアウト・デリバリーを行うにあたっては、食品表示基準に定められた表示は不要ですが、以下の場合は食品表示が必要となります。
●運搬を行うのが調理をした飲食店ではなく、運搬を代行する宅配業者の場合、食品表示が必要です。
●小売店舗の店内で弁当・お惣菜を調理し、容器包装に入れて販売する場合、名称・添加物・アレルゲン・保存方法・期限表示・製造者などの安全上必要な項目の表示が必要です。
●弁当・お惣菜を仕入れて販売する場合、食品表示が必要です。
食品表示が必要となる弁当・惣菜の具体的な表示事項をまとめました。表示ラベルを作られる方は、ご参考にしてください。
※最終的な確認は、最寄りの保健所もしくは、消費者庁食品表示企画課で確認しましょう。
「弁当・惣菜の基本表示資料」は、下記ページよりダウンロードが可能です。
「お持ち帰り・テイクアウト時の食品表示のルールまとめ」(食品表示.com)
https://hyouji.maru-sin.net/takeout/
一般的な名称を記載します。
弁当/名称例)幕の内弁当、のり弁当、唐揚げ弁当
惣菜/名称例)ポテトサラダ、煮豆、コロッケ
●特色のある原材料表示
「博多牛肉弁当」等、特色のある原材料の場合は100%でなければ使用した割合を表示します。
例)博多牛肉弁当(牛肉に占める博多牛の割合○○%)
原材料に占める重量の割合の多い順に記載します。アレルゲン、遺伝子組み換え食品の表示を記載します。
お弁当には駅弁のように透明ではない容器のものと食品スーパーマーケットのように透明(上蓋)容器のものがあり、それぞれ表示のルールが違います。
①透明でない容器弁当の場合
駅弁や御重弁当のように、透明でない容器に入れられたお弁当の場合は、商品を見ておかずなどを確認できないため、原材料名の簡素化はできません。つまり、一般加工食品と同様に必要な表示事項を記載します。尚、弁当の中身を別にPOPや写真でわかるようにしても簡素化はできません。
②透明容器弁当の場合
外部から見て、その原材料がわかる「おかず」は、簡素化して表示することが可能です。但し、簡素化する場合でもすべてのおかず類、付合せ類に含まれるアレルゲンと添加物の表示は省略できません。
※鶏唐揚げ:名称からその原材料が明らか(複合原材料の名称に主要原材料が表示されているため)であるため、原材料の表示が省略できます。
※煮物:煮物の表示だけでは原材料が明らかではありません。よってこのような複合原材料の場合は後ろに括弧して原材料を表示します。
原材料名は重量割合の高い順に一般的な名称で表示します。
複合原材料の重量割合の高い順が3位以下かつ当該複合原材料に占める重量割合が5%以下であればその他として表示することができます。
●弁当の義務表示について(原材料名の簡素化)
弁当外部から見て原材料が分かる場合は簡素化することができます。
・おかず類をまとめて「おかず」として表示できます。
・付け合わせとして少量を添えられる佃煮やごま等は「付合せ」として表示できます。
・メインとなるおかずを表示しその他のおかずを「その他おかず」、「その他付合せ」と表示することができます。
省略されるおかず類に含まれるアレルゲン、添加物は省略ができません。必ず抜粋して表示します。
●おかずの表示範囲
外観からその原材料が明らかなおかずとは、弁当の外部から一見してそのおかずが何であるか確認できるものを指します。
例)鶏の照り焼き、焼鮭、目玉焼き、筑前煮、ポテトサラダなど
中身が確認できないものは基本的に「おかず」、「その他のおかず」と簡素化できません。
例)フライや天ぷらなどの衣で包まれたおかず など
但しフライ・天ぷらでも「おかず」、「その他おかず」と簡素化できる場合があります。
①外部からの主要原材料の推定が可能なもの
例)形状からエビであることが推定できるエビフライ、衣を透かして中身が見える野菜の天ぷら、切り口からポテトコロッケであることが推定できるコロッケなど
②主要なおかずで弁当の名称に使用しているもの
例)ロースカツ弁当のロースカツ、サケ&メンチ弁当のメンチカツ など
シール等で内容物が明確であるもの
例)メンチカツである旨のシールを商品表面に貼付している場合のメンチカツ など
●「おかず」と表示する際の注意
「おかず」と省略できるものと、省略できないものが混在する場合、省略できないもののみ表示すると、その表示されたおかずがメインであるとの誤認を与えるおそれがあります。
弁当例)
※トンカツ、クリームコロッケは、衣で包まれており、外観からそのおかずの種類がわからないため、「おかず」と省略できません。
※簡素化の例を示すため、ここではアレルゲン及び添加物の表示は省略しています。
添加物に占める重量の割合の多い順に記載します。アレルゲン表示を記載します。
グラムなど単位を明記して記載します。「1人前」、「1食」でも可です。
お弁当屋やお惣菜の内容量は、内容重量で表示する以外に、「1食」、「1人前」、「1個」などと内容数量が表示できます。
この場合、内容量を外見上容器に選別できるものは、内容数量を省略することができます。
必要に応じて時間まで表示します。
食品表示基準では、「時間」までの表示を義務付けておりません。しかしながら品質(状態)の劣化が特に早い弁当にあっては、「年月日」の表示に加えて必要に応じて「時間」まで表示するよう、「弁当及び惣菜の衛生規範」により推奨されています。
表示ラベルを作成できるテンプレートデータをダウンロードできます。
ご活用いただければと思います。
PDF、ai、Excelデータをご用意しております。(内容は全て同じです)
※最終的な確認は、最寄りの保健所もしくは、消費者庁食品表示企画課で確認しましょう。
食品表示ラベルの制作にお困りの方は、「ラベル印刷・シール印刷.com」でオリジナルシールの制作が可能です。
ラベル・シールのお困りごとを、電話やお問い合わせフォームで相談できますので、ぜひご活用ください。
※参考:「食中毒を防ぐ3つの原則・6つのポイント」(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/index.html
※参考:「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」(日本食品衛生協会)
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000479903.pdf
※参考:「食中毒予防にオススメの衛生商品」 ノロスター75、ノロスター、セーフコール等
https://store.shopping.yahoo.co.jp/labelseal/b1d2c0b8cd.html