HACCPサポート
2022/06/10
JAふくおか八女(福岡八女農業協同組合)は、福岡県八女市、筑後市、八女郡広川町を区域とする農業協同組合。自然豊かな管内では、みかん・ぶどう・なし・キウイフルーツなどの果樹から、あまおう・トマト・なすなどの野菜、そしてお茶の生産が盛んに行われている。
丸信が提供するHACCP認証取得支援サービスを利用してHACCP認証を取得した、JAふくおか八女・八女茶加工センターの牛島歩氏に、認証取得までの経緯や導入のメリット、今後の期待などについて取材しました。
JAふくおか八女が認証を取得したのは2021年9月。対象は、八女茶加工センターと農産加工センターで、いずれもHACCPの要求事項を満たしたJFS-B規格。八女茶加工センターで認証取得の担当者に指名されたのが日頃は経理を担当している牛島歩氏だった。
全ての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が求められるHACCP制度化が義務付けられると、同組合ではHACCPに準ずるだけでなく実際に認証取得を目指す方針に。牛島氏はHACCPに関する経験や知識は皆無だったが「もともと自前で食品安全基準を設けていたため抵抗はなかった」と話すように10年前から独自の安全規格「自主GAP(農業生産工程管理:Good Agricultural Practice)」を運営してきた。
具体的には独自基準に基づいて、加工現場における定期的な衛生パトロールや課題の抽出、報告、改善実施などを、八女茶加工センターのみならず農産加工センターや選果場・集荷場・ライスセンターなどほぼ全ての施設で適用してきた。
とは言え、従来、運用してきた独自基準とHACCPの要求事項には大きな差があった。「HACCPでは厳しくなる部分が多く、報告も多くなる。段違いにレベルが上がるので覚悟して取り組む必要があった」と牛島氏は当時の心境を明かす。
取得に向けて、設備面では昆虫や微生物の混入、ほこりの付着などを徹底的に除外するための対策をとった。
具体的には、冷蔵庫内に直置きしないためのパレットや、商品や資材を運搬するための台車、資材等の保管棚、出入口には防虫ビニールカーテンも設置した。
特に資材に関しては、これまでは害虫が寄り付かないと思われていたものでも対策を要求されるなど「これまでの自主体制にはなかった」と基準の厳しさを実感したという。
もっとも苦労したのが、異物混入を防止するための金属検出機やX線検査機に関する書類。この部分のチェック体制を説明する文書が3度差し戻され、4度目でようやく通過。「チェックは従来も十分に行っていたが、その後の記録保存の体制がこれまでの経験にはなかった」と、ここでもHACCPの要求レベルの高さを感じることになった。
JFS-B規格を取得して10か月が経過したいま、実際の効果としては「従業員の意識の向上」をあげる。「文書の件で3度差し戻されたとき、協力してくれたり励ましてくれた仲間がいたから認証を取得できたし、協力関係が築けたからこそ現場で一生懸命に取り組んでもらえている」と感じる。
また、自主基準に比べると要求レベルも、取得の難易度も高かったものの、その分、信頼性の高さがついてきているのも事実。「やはり認証の有無は大きな違い。お客様からの信頼も大きい」というように、特に商品企画書への記載や適合証明書の提出を求められる時に、信頼性の重要性を実感しているという。
最後に牛島氏は「私一人では取得できなかった。八女茶加工センター全体の協力や支えがなければ取得できなかったと思うし、これから運用していく上でも協力体制は大事」と仲間に感謝する。
(取材:株式会社丸信 ライター 田中/取材日:2022年5月)
JAふくおか八女は、従来の自主規格の経験をベースに、広く信頼されるHACCP認証へと舵を切り、認証取得を実現した。「従業員の意識の向上」を効果としてあげつつ、HACCPを運用していく上でもっとも大切なことが「意識」であることを実感。HACCP認証取得を契機に、日本でも有数のお茶の産地である八女全体の信頼性につながることを期待したい。